小学中学と剣道、高校でフェンシングを経験しました。
動画を見れば、剣道対フェンシングと言う無謀な企画もあるわけですが、剣道に舞い戻った身からすると、エンタメと分かっていながらフェンシングが有利であるのは残念です。
『フェンシングの速さ』が理由として上がりますが、そもそもの戦い方からルールまで、圧倒的に剣道が不利な事も理由だと思います。
「静」と「動」と言う、戦うにあたり全く異なる考え方も同様です。
まずはどんなものか、それぞれを簡単に説明します。
フェンシング
- 種目と剣の形状
「フルーレ」「エペ」「サーブル」の三種目。
「フルーレ」
長さ110cm以下
重さ500g以下
剣身は細く良くしなる。
変に入ると結構危険。
「エペ」
長さ110㎝以下
重さ770g以下
ガード(剣道で言う鍔)が大きく、剣身も太い。
変な角度でまともに刺さると大怪我。
亡くなった方もいる(本当に)。
「サーブル」
長さ105㎝
重さ500g以下
ガードは手の甲を覆う形状。
斬る事も有効なので、刃の形状となっており、半分両刃なので裏刃もある。
細い枝なら斬れる。
- 有効打突面と戦い方
「フルーレ」
頭部と四肢を除いた上半身が有効面。
攻撃権が必要で、先に攻撃した方が優先される。
剣を払う(触れる)事で攻撃権を奪う事が出来る。
「エペ」
全身が有効面
攻撃権の考えは無く、とにかく先に突けば勝利。
同時突きは両者ポイント。
「サーブル」
頭部を含めた上半身が有効面
攻撃権が必要。
突き以外に斬りも有効。
裏刃(峰側の2/3位は両刃)があり、裏で斬っても有効。
どの種目も戦い方の考え方としては「後の後」が主になるかと考えます。
相手が出てきた後にどう反撃するか…
駆け引きと瞬時の判断が必要になります。
剣道
竹刀の重さはそれぞれですが、大学生、一般は以下です。
長さ3尺9寸(約120㎝)
重さ510g以上(女性440g以上)
意外にもエペの方が重いとは…
- 有効打突面と戦い方
面(正面左右)
小手(左右)
胴(左右)
突き
攻撃権のような明確なルールはありません。
当たれば有効ではなく、有効打突としては要件が様々あるので割愛します。
詳しくはこちら
「先の先」が主になるかと考えます。
先に攻める、動きを読む、相手を動かすと言う点が、相手が動いてからどう返すという「後の後」であるフェンシングとの明確な違いとなります。
剣道が不利な理由
それぞれの競技ルールに則り、フェンシングはフルーレ、エペ、サーブルのどれでも良いとした場合。
- 「当てればポイント」が不利
フェンシングは結果、有効面に当てれば良いと言うルールです。
剣道もフェンシングのルールに則って当てれば良いとした場合でも、剣道は当てれば良いで稽古はしていません。
長きに渡る習慣から正しい刃筋で打突しようとするため、相手より遅れが出来ます。
また、剣の軌道がほぼ無限のフェンシングに対し、剣道は「縦横斜め突き」と決まっています。
対応するには困難極まります。
- 「攻撃権」が不利
フルーレ、サーブルは相手の剣を払う(触れる)と攻撃権が移ります。
例え剣道が攻め勝って打突に行っても、剣が竹刀に触れて、どこかを突けばフェンシングの勝ちです。
竹刀はフェンシングのブレードのように変幻自在と言う訳には行きません。
攻撃権のルールは無しとしても「当てればポイント」となります。
元々エペは攻撃権が無く、当たれば同時突きもポイントなので、合わせる事には慣れています。
剣道の打突に合わせて剣を繰り出し、身体のどこかを突けば、同時打ちで負ける事がありません。
- 多彩な技で不利
フルーレとサーブルでは、攻撃権がある方の打突が有効となります。
攻撃権を奪うには、相手の剣を払う事です。
しかし、なんとフェンシングには『コントルアタック』と言う、相手の剣を身で交わしつつカウンターを放つと言う 卑怯な 技があります。
また、遠間からでも逆足で踏み込む(剣道であれば一刀中段で右足)『フレッシュ』と言う捨て身の大技があります。
お前ら、騎士道精神はどうなんだと言った所で、武士道と騎士道は根本が違うようなので、一騎打ちでも卑怯とか言ってられません。
- 「突き」が不利
剣道にだって突きがある…あるにはありますが、剣道は竹刀全体に重量が掛かるので、一撃必殺は必須です。
一方、フェンシングは相手の剣をしゃがんで避けるのも可です。
(私は多用した)
剣道の突きを読まれてしゃがまれてのコントルアタックほど、頭の来る やられた感がある技はありません。
精神まで愚弄されます。
剣道で突きの連発は「六三四の剣」の武者が放つ『マシンガン突き』くらいな物ですが、あれは二次元の世界なので、実質不可能です。
- 対サーブルが一番不利
サーブルには突き以外に斬りがあります。
突きのみであれば接近戦で竹刀を振りまくればあるいはと思いますが、サーブルは返し技が打てます。
接近戦でもサーブルは剣身が短い上に軽いので、フェンシングが圧倒的に有利です。
しかも半両刃で裏刃があるため、剣道の打突時に合わせて下がりながら裏刃でちょこんと当てる事も可能。
圧倒的に不利です。
- 竹刀と剣の操作で不利
竹刀の太さと重さを利点として、フェンシングの剣を巻く、叩くことで隙を作る、よしんば落としてはどうか・・・と思い付く方もいるかと思います。
フェンシングの柄(ヒルト)にはサーブル以外は多種あります。
主に棒状(と言って真っ直ぐではない)のフレンチと、操作がしやすいベルギアンが使われます。
フルーレはベルギアンが主で、エペは刀身の長さを出すためにフレンチも多かったように思います。
しっかり握って操作が出来るベルギアンを使われたら、竹刀の重さと太さを活かして巻いて云々は通用しません。
フレンチ
ベルギアン
ビスコンチ(別名 ピストル型)
もっとも高校の貧乏部活はもっとお安いお店に行っていましたが…
なくなってしまったのか、HPを持っていないのか。
- 剣道のルールに合わせたとしても不利
上記の諸々があります。
フェンシングの打突部位を剣道に合わせる事や、攻撃権の無効、試合場を剣道に合わせても、スピードと剣捌きへの対応は難しく、不利に変わりは無いと考えます。
変に入るとこんなことも無くは無い(自分画伯)
さておき、かように不利な剣道ですが、対処法は無いものか?
旦那、ありますぜ。
まて次回!
見せてもらおうか(自分画伯)